アナログ回路講座② 3端子レギュレータは最大定格電流を出力できるのか?

最大定格電流1.5Aの3端子レギュレータ

テキサスインスツルメンツ製の3端子レギュレータであるLM7805の最大定格電流は1.5Aです。この3端子レギュレータは最大1.5Aの電流を出力することができるのでしょうか?
最初に3端子レギュレータについて説明します。3端子レギュレータは入力端子、出力端子、グラウンド(基準電圧)の3個の端子がある電源回路で、入力電圧を降圧して定電圧を出力します。冒頭に説明したLM7805は、5V電圧を出力する3端子レギュレータです。
3端子レギュレータの特徴は以下の通りです。

  • 別名:リニアレギュレータ
  • 3端子レギュレータにはシリーズレギュレータとシャントレギュレータがある。
  • 降圧はできるが、昇圧はできない。
  • 出力電圧を可変できるタイプがある(出力可変タイプ)。
  • 発熱に注意が必要。

入力電圧をドロップして定電圧を出力

図1 シリーズレギュレータの内部回路

図1にシリーズレギュレータの内部回路を図示しています。ちなみに、LM7805はシリーズレギュレータになります。シリーズレギュレータは、入出力端子間に接続される等価的な直列抵抗を連続可変して電圧を制御します。つまり、入出力端子間に接続されたPNPトランジスタのベース電流を調整して、コレクタ電流を可変することにより出力電圧を制御しています。このようにトランジスタで入力電圧をドロップして出力するため、効率は良くありません。例えば、入力電圧12V、出力電圧5V、出力電流1Aのシリーズレギュレータの場合、効率は
(5V×1A)÷(12V×1A)× 100 ≒ 42%
になります。つまり、消費されない58%のエネルギーは熱に変換されて放出されます。

最大定格電流を出力できるのか?

3端子レギュレータを使用するときには、発熱に注意しなければいけません。つまり、3端子レギュレータで出力できる電流は、この発熱量と大きく関係しています。言い換えれば、発熱量が多くなると許容出力電流は低下します。
図2に3端子レギュレータの許容出力電流の算出式を図示します。


図2 3端子レギュレータの許容出力電流算出式

最大ジャンクション温度:150℃
周囲温度:60℃
Tj(max):ジャンクション温度(℃)
Ta:周囲温度(℃)
θja:ジャンクション-周囲温度間の熱抵抗(℃/W)
※パッケージTO-263の場合、44.8℃/W
Pd:許容電力
I(max):許容出力電流

LM7805のデータシートには、ジャンクションと周囲雰囲気間の熱抵抗が44.8℃/Wと表示されています。この熱抵抗とは温度の伝えにくさを表す値で、発熱量あたりの温度上昇量を表しています。この場合、1Wでジャンクションと周囲雰囲気間温度が44.8℃上昇するということです。つまり、この最大ジャンクション温度と周囲温度の差を熱抵抗で割ると許容電力、言い換えればLM7805で損失できる最大電力を算出できます。それぞれの数値を当てはめて計算すると、許容電力は2Wになります。仮に入力電圧12V、出力電圧5Vとすると、図2の算出式から許容出力電流I(max)は0.28Aになります。このLM7805の最大出力電流は1.5Aですが、入出力端子間電圧7V、周囲温度60℃の使用条件下での最大出力電流は0.28Aとなります。つまり、3端子レギュレータの場合、最大定格電流が出力可能な電流ではなく、データシートに記載されている熱抵抗と使用条件(電圧降下、周囲温度)から許容出力電流を算出しなければいけません。