バッテリマネジメント講座① リチウムイオンバッテリの特徴とは?

市場規模が拡大するリチウムイオンバッテリ

スマートフォンやノートパソコンなどのモバイル機器から電気自動車やハイブリッドカー、蓄電池など、リチウムイオンバッテリは現代の我々の生活には欠かすことができない蓄電デバイスとなっています。 しかしながら、リチウムイオンバッテリの特徴を理解されている方は少ないと思います。そこで、リチウムイオンバッテリの特徴を以下にまとめてみます。

特徴① セル電圧が高い

代表的な二次電池の1セルあたりの公称電圧を表1にまとめてみました。リチウムイオンバッテリのセル電圧は、鉛蓄電池の1.8倍、ニカド電池、ニッケル水素の3倍となっています。つまり、他の二次電池と比べて少ないセル数で高電圧を実現することができます。

リチウムイオンバッテリ3.6V
鉛蓄電池2.0V
ニカド電池1.2V
ニッケル水素電池1.2V
表1 代表的な二次電池のセル公称電圧

特徴② エネルギー密度が高い

エネルギー密度とは、バッテリの単位質量もしくは単位容積あたりに取り出せるエネルギー量のことで、単位はWh/kg(重量エネルギー密度)やWh/L(体積エネルギー密度)が使用されます。
鉛蓄電池の重量エネルギー密度が約30~40Wh/kgに対して、リチウムイオンバッテリは約150~200Wh/kgであるため、鉛蓄電池に対してリチウムイオンバッテリのエネルギー密度は約5倍あります。つまり、バッテリを搭載するスペースは、鉛蓄電池と比較してリチウムイオンバッテリは約1/5で済むということです。

特徴③ 急速充放電が可能

リチウムイオンバッテリは、他の二次電池と比べて内部抵抗が低いため、大きな電流で充電もしくは放電することができます。一般的に3C~5C(※1)の電流を連続で充電もしくは放電することができます。例えば、定格容量40Ahのリチウムイオンバッテリを120Aで充電する場合、約20分で充電が完了する計算になります。

※1 “C”はバッテリの公称容量を表す記号で、1Cとは連続して1時間放電したときに放電終了となる電流値のこと。

特徴④ サイクル寿命が長い

二次電池は充放電を繰り返すと劣化するため、バッテリ容量が徐々に低下していきます。1Cの電流で充電と放電を繰り返した場合、鉛蓄電池は500回程度で電圧が著しく低下し始めます。リチウムイオンバッテリの場合、使用環境などの違いにより一概には言えませんが、3000~4000回は使用できます。

特徴⑤ 価格が高い

リチウムイオンバッテリの普及を阻む大きな要因は、バッテリ価格にあります。約10年前(2010年)は1kWhあたり約10万円と言われていたため、その頃に比べたら安くはなりました。しかしながら、2020年の時点で1kWhあたり2万円前後であるため、他の二次電池と比較すると高価です。電気自動車に搭載されるバッテリ容量が50kWh前後であることを考えると、リチウムイオンバッテリだけで約100万円近くのコストが掛かっている計算になります。

その他にリチウムイオンバッテリは過充電もしくは過放電すると、異常発熱して発火発煙の危険性があります。しかしながら、バッテリを正しく制御すれば安全に使用できます。つまりは、このブログのタイトルになっているバッテリマネジメントが重要になってきます。