アナログ回路講座⑤ オペアンプはフルスイングできない?

オペアンプの入出力電圧範囲

図1 一般的なオペアンプの回路図

ルネサス製オペアンプ uPC358のデータシートには、出力電圧範囲の最大値は V+(電源電圧)-1.5V、入力電圧範囲の最大値はV+-1.5Vと記載されています。つまり、電源電圧が5.0Vの場合、入力電圧または出力電圧は3.5Vまでしか入出力できないのです。
図1に一般的なオペアンプの回路図を図示しています。一般的なオペアンプの入力段は、+端子(IN)、-端子(II)共に2個のPNPトランジスタ(Q1~Q4)をダーリントン接続しています。PNPトランジスタのベース-エミッタ間電圧(VBE)は約0.6Vです。例えば、IN端子側のトランジスタ Q3、Q4の場合、トランジスタがオンしたときには、Q3のエミッタ-IN端子(Q4のベース)間には約1.2Vの電圧降下が発生します。つまり、V+-IN端子間に1.2V以上の電圧降下が発生しないとベース電流を流すことができず、トランジスタ Q3、Q4はオンすることができません。
一般的なオペアンプの出力段のハイサイドは、2個のNPNトランジスタ(Q5、Q6)をダーリントン接続しています。入力段と同じように、V+-出力端子(OUT)間に1.2V以上の電圧降下が発生しないと、トランジスタ Q5、Q6はオンできません。

レールトウレールのオペアンプ

図2 レールトウレールのオペアンプの回路図

入出力電圧範囲の最大値を電源電圧付近まで使用したい場合は、レールトウレールのオペアンプを検討します。レールトウレールの場合、入力電圧または出力電圧を電源電圧付近まで入出力できます。
図2にレールトウレールのオペアンプの回路図を図示しています。入力段は、PNPとNPNトランジスタの両方のトランジスタを使用しています。NPNトランジスタ Q3、Q4を入力段に追加することにより、電源電圧付近の入力電圧を入力することができます。
出力段のハイサイドにはPNPトランジスタ Q5、ローサイドにはNPNトランジスタ Q6を使用しています。つまり、PNPトランジスタ Q5により、電源電圧付近の電圧を出力することができます。

レールトウレールの注意点

  • レールトウレールの最大出力電圧
    最大出力電圧は、電源電圧まで出力できるわけではありません。レールトウレールであっても、出力電圧は電源電圧より50mV~100mV程度低くなります。なぜならば、PNPトランジスタのコレクタ-エミッタ間の飽和電圧(VCE(SAT))に依存するためです。つまり、トランジスタのコレクタ-エミッタ間の電圧を0Vにすることはできません。
  • 電源電圧のバラツキの影響
    一般的なオペアンプの出力段は、トランジスタのVBE電圧で出力電圧が制約されていたため、電源電圧のバラツキが直接トランジスタの出力に影響を与えることはありません。しかしながら、レールトウレールの場合、出力段のハイサイドはPNPトランジスタ、ローサイドはNPNトランジスタであり、電源電圧の変動によりベース電流が変化するため、トランジスタの出力に影響を与えてしまいます。
  • 出力インピーダンスが高い
    一般的なオペアンプの出力段は、ハイサイドにNPNトランジスタ、ローサイドにPNPトランジスタを使用しているため、出力インピーダンスは低いです。しかしながら、レールトウレールの場合、出力段のハイサイドはPNPトランジスタ、ローサイドはNPNトランジスタであるため、出力インピーダンスは高くなります。そのため、出力端子にコンデンサのような容量性負荷を接続した状態で負帰還を掛けると、発振しやすくなります(※利得帯域幅積以内であれば問題ありません)。

(参考文献)
 μPC1251、μPC358データシート ルネサスエレクトロニクス株式会社(2017年)