ノイズ対策講座⑨ ローパスフィルタ回路によるノイズ対策

パッシブフィルタ

図1 LCローパスフィルタ(パッシブフィルタ)

パッシブフィルタは、インダクタとコンデンサ、抵抗とコンデンサの受動素子で構成されたフィルタです。図1のLCローパスフィルタの場合、インダクタのインピーダンスはjωLで表すことができ、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなります。コンデンサのインピーダンスは1/jωCで表すことができ、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが低くなります。そのため、高周波信号を除去できるローパスフィルタになります。
図1のLCローパスフィルタは、インダクタの代わりに抵抗に置き換えてローパスフィルタを構成することも可能です。LCローパスフィルタの場合、LC共振回路のため、ノイズ波形のプラス側でコンデンサにエネルギーを蓄えて、マイナス側でコンデンサから放出されるエネルギーをインダクタに蓄えることでエネルギーが往来します。RCローパスフィルタの場合、プラス側でコンデンサに蓄えられたエネルギーがマイナス側では抵抗で消費されるため、遮断特性のキレが悪くなります。
パッシブフィルタの利点は、大電力の信号に対応し、周波数特性が広く、電力を必要としない点です。パッシブフィルタの一番の欠点は、低周波においてインダクタのL値が大きくなるため、磁束を撒き散らし、多くの実装面積を必要になる点です。また、受動素子のため、利得を得ることができません。そのため、パッシブフィルタは高周波帯域、10kHz以上の帯域で使用されることが多いです。

アクティブフィルタ

図2 サレンキー型2次ローパスフィルタ(アクティブフィルタ)

アクティブフィルタは、オペアンプなどの能動素子と抵抗やコンデンサで構成されたフィルタです。図2のアクティブフィルタは、サレンキー型2次ローパスフィルタです。オペアンプの入力にRCフィルタが2個接続された回路になっています。
アクティブフィルタの利点は、オペアンプで増幅機能を付加することができ、遮断特性の鋭さを調整できる点です。アクティブフィルタの欠点は、電源を必要とする点、オペアンプなどの能動素子は高周波特性が良くない点、回路構成が複雑で設計が難しい点が挙げられます。そのため、アクティブフィルタは低周波帯域で使用されます。

RCローパスフィルタとLCローパスフィルタ

図2 RCローパスフィルタ(左)とLCローパスフィルタ(右)(※1)

パッシブフィルタのRCローパスフィルタとLCローパスフィルタの違いを図2で説明します。仮に入力信号の周波数が10倍高くなったときの減衰量を考えてみます。
RCローパスフィルタの場合、入力信号の周波数が10倍高くなるとコンデンサのインピーダンスは10分の1になります。そのため、入力信号の電圧VINは10分の1になり、減衰量は-20dBです。
LCローパスフィルタの場合、入力信号の周波数が10倍高くなるとインダクタのインピーダンスは10倍になり、コンデンサのインピーダンスは10分の1になります。そのため、入力信号の電圧VINは100分の1になり、減衰量は-40dBです。つまり、LCローパスフィルタはRCローパスフィルタと比較して10倍減衰できるという訳です。言い換えれば、図2のRCローパスフィルタを2個接続することにより、LCローパスフィルタと同じ減衰量を実現できます。

【参考文献】(※1)オームの法則から! 絵ときの電子回路 超入門 97ページ CQ 出版社(2017年4月)