技術継承講座-1 人材不足で断念しない製品開発

製造業の就業者数は減少傾向

 製造業の就業者数は、2002年は約1202万人に対して2022年は約1044万人というデータがあります。20年間で約157万人の就業者数が減少していることになります。全産業の就業者数は、2002年6330万人→2022年6713万人であるため、製造業の就業者数のように減少しているわけではありません。つまり、現在の状態が続くと、製造業の就業者数は、益々減少していくことになります。

 2020年から技術コンサルタントとして活動していますが、最近よく耳にするのがハードウェアエンジニアの不足です。ハードウェアエンジニアとは、電子回路や電子基板を設計する設計者です。そのため、技術コンサルティングではなく、電子回路を設計してほしいとの相談を受けることが多くなっています。

 一方でソフトウェアエンジニアは、アプリを開発するエンジニアは増加したかもしれません。しかしながら、家電や工業機器などの製品を制御する、組み込みソフトウェアの設計者は減少しているように感じています。

持続可能な製品開発

 いままで説明したように、家電や工業機器などの製品を開発するエンジニアは減少していきます。その中で、企業は製品開発を継続しなければいけないため、いままで通りの開発体制ではいずれ破綻してしまいます。そこで、今回はエンジニアが不足していく中で、持続可能な製品開発をお話しいたします。

 リチウムイオンバッテリを販売するA社の事例を紹介します。A社では社長の他に関連企業から出向しているバッテリ専門のエンジニアBさんと、御年76歳の電気設計のエンジニアCさんが在籍しています。

 A社はバッテリの販売を促進するために、鉛蓄電池を搭載した電動バイクに、自社で販売するリチウムイオンバッテリを搭載できるようにコンバージョンする事業を展開しています。さらに、コンバージョンした電動バイクを充電するための急速充電スタンドが必要になるため、電動バイクに搭載するバッテリパックと、急速充電スタンドを開発することになりました。

エンジニア3人で急速充電システム開発?

 このときの開発体制を図1に図示しています。私は電子回路設計やシステム設計などを担当しました。私の事務所がある建屋に入居している企業の代表であるエンジニアDさんが、ソフトウェア設計を担当しました。A社のエンジニアCさんは、電動バイクの改造や充電器の試作などを担当しました。つまり、電動バイクのバッテリパックや急速充電スタンドの急速充電システムを3人のエンジニアで開発したのです。

 急速充電システムの開発期間に2年近くの時間を要していますが、その2年間で充電スタンド2機種、電動バイク用バッテリパック、制御用スマホアプリなどの開発を行いました。おそらく、一般的な企業であれば、10人以上のエンジニアで開発を行う案件だと思います。

図1 A社の急速充電システムの開発体制

少人数で開発できる理由

 急速充電システムを3人で開発できたのは、以下のような理由が考えられます。

一部の開発を外注へ委託する
 私が電子回路設計やシステム設計を担当しましたが、基板設計や基板実装は外注していました。その他には筐体製作や充電スタンドのデサイン、電源装置は外注していました。このように、外部に委託できる作業は外注することにより、工数不足を解消しています。

開発メンバーがプロフェッショナルである
 A社のエンジニアであるCさんは、音響機器開発や風力発電機開発経験以外に電気工事士の資格があります。そのため、充電スタンドの電気配線は自分で対応できます。エンジニアDさんは、Arduinoのプログラミングの他に、スマホアプリのソフトウェア設計ができます。このように、各自が複数の技術を保有しており、少数精鋭で開発できたのです。

弊社で開発体制をサポート

 弊社では、人材不足で開発を断念している企業様や技術継承に苦慮している企業様をサポートいたします。貴社のご希望をお伺いした上で、専門家チームが貴社の開発へ参画したり、開発を後方支援したりすることにより、製品開発を実現する方策を提案いたします。初回は無料でご相談いただけるため、ご興味ございましたら、是非お問い合わせください。