バッテリマネジメント講座③ バッテリモジュールの構成と注意点

バッテリモジュールとバッテリパックの違い

バッテリモジュールとバッテリパックを混同されている方がみえるかもしれません。図1にバッテリモジュールの例を図示しています。

図1 バッテリモジュールの例
  • バッテリモジュール
    複数個のバッテリセルで構成されている場合(図1左側の青色部分)や複数個のバッテリセルにセルモニターユニット(CMU)を組み込んだ場合(図1右側の黄色部分)があります。
  • バッテリパック
    図1のようにバッテリモジュールとバッテリマネジメントシステム(BMS)の他にコンタクタ、リレーなどの遮断器、ヒューズ、電流センサなどの部品で構成されています。

バッテリモジュールのシステム構成

図2 バッテリモジュールの構成図

図2にバッテリモジュールの構成図を図示しています。この構成は、図1のバッテリモジュール②に該当します。つまり、バッテリセルとセルモニターユニット(CMU)の構成図になります。
バッテリモジュールからは、バッテリから供給されるプラス電圧(BAT+)とマイナス電圧(BAT-)、CANなどの通信線をシステム側へ出力します。システム側からはシステム電源(12V)とグラウンド(GND)を入力します。
各バッテリセルは、セルモニターユニットに搭載されている電池監視ICに接続されます。電池監視ICとマイコン間はI2CやSPIなどのシリアル通信でデータを送受信します。電池監視ICの電源は、直列に接続されたバッテリセル最上位のプラス電圧(BAT+)と最下位のマイナス電圧(BAT-)を接続します。マイコンの電源は、BAT+をリニアレギュレータで降圧した電圧(5V)を使用します。
注視すべき点は、電池監視ICやマイコンのバッテリ側とバッテリマネジメントシステムなどのシステム側を絶縁していることです。つまり、図2においてマイコンとCANトランシーバ間に配置されているデジタルアイソレータで絶縁しています。そのため、デジタルアイソレータの1次側(バッテリ側)の電源はマイコンと同じくBAT+をリニアレギュレータで降圧した電圧(5V)を使用し、2次側(システム側)の電源はシステム電源(12V)をリニアレギュレータで降圧した電圧(5V)を使用します。

システム側と絶縁する理由は?

図2のようにバッテリ側とシステム側を絶縁する理由は何でしょうか?多くのバッテリパックでは、バッテリモジュールを直列に接続して搭載しています。
バッテリモジュール単体では電極に接触しても人体に影響を与えることは殆どありません。しかしながら、モジュールを直列に接続した場合は高電圧になるため、感電の危険性があります。電気的にはバッテリ電圧が60Vを超過すると感電に注意する必要があります。
電気自動車の安全に関係する規格としてJIS D5305があります。その第3部(JIS D5305-3)に「電気危害に対する人の保護」という規格があり、最大動作電圧がDC60V以上の場合は絶縁するように規定されています。そのため、バッテリモジュール単体ではバッテリ電圧が60V以下であってもバッテリパックでは直列に接続して使用することを考慮し、図2のような絶縁対策が必要になってきます。