アナログ回路講座-6 スイッチングレギュレータの特徴と動作原理
スイッチングレギュレータの特徴とは?
アナログ回路講座②において、3端子レギュレータについて説明しました。今回は、スイッチングレギュレータについて説明します。
スイッチングレギュレータの特徴を以下に述べます。
- 電圧平滑用として使用されるインダクタやコンデンサは電力を損失しない
インダクタに電流を溜め込み、コンデンサに電荷を貯蔵します。 - スイッチ素子として使用されるトランジスタの損失は殆どない
トランジスタがオンのときには電流が流れますが、電圧降下は殆ど発生しません。オフのときは電圧が印加されますが、電流は流れません。 - 3端子レギュレータは降圧のみであるが、スイッチングレギュレータは昇圧も可能
- スイッチングノイズを発生する
スイッチングレギュレータの基本はチョッパ回路
降圧レギュレータの動作原理を説明する前に、チョッパ回路でスイッチングレギュレータの理解を深めたいと思います。図1にチョッパ回路を図示しています。
図1において、スイッチで直流電源をオンもしくはオフすることにより、抵抗 Rに印加される電圧をパルス波形にします。この抵抗 Rに印加される平均電圧は、スイッチのオン時間とオフ時間の比率で決定されます。つまり、オン時間とオフ時間が同じであれば、この平均電圧は図1のように半分になります。
降圧レギュレータの動作原理
このチョッパ回路を応用した降圧レギュレータについて説明します。図2に降圧レギュレータの回路図を図示しています。チョッパ回路のスイッチが、図2のMOSFET Qに該当します。その他には、電圧を平滑するインダクタ Lとコンデンサ C、整流ダイオード Dが使用されています。
このMOSFET Qがオンすると、図2(a)のような電流のパスが発生します。つまり、このインダクタ Lには入力電圧Eiから出力電圧Eoを引いた電圧が印加されます。インダクタの性質上、インダクタに流れる電流は、図2のように最初からは流れずに少しずつ上昇していきます。
次にMOSFET Qがオフすると、インダクタ Lの誘導起電力によってダイオード Dがオンし、図2(b)のような電流のパスが発生します。そして、インダクタ Lとコンデンサ Cで電圧が平滑されます。この出力電圧は、スイッチングの周期に対するオン時間の比率で決定されます。
昇圧レギュレータの動作原理
図3に昇圧レギュレータの回路図を図示しています。図3において、MOSFET Qがオンすると、図3(a)ような電流のパスが発生します。このとき、インダクタ Lには入力電圧Eiがそのまま印加されます。また、負荷には電圧が印加されないため、コンデンサ Cから負荷へ電流が供給されます。
次にMOSFET Qがオフすると、ダイオード Dがオンして図3(b)ような電流のパスが発生します。このとき、負荷には入力電圧Eiとインダクタ Lに印加された電圧Eiの2Eiの電圧から、ダイオードDの順方向電圧VTを差し引いた電圧が出力されます。この出力電圧は、スイッチングの周期に対するオフ時間の比率で決定されます。