バッテリマネジメント講座⑩ バッテリマネジメントシステムで監視すべきエラー

監視すべきエラーとは?

バッテリマネジメントシステムで監視すべき代表的なエラーを以下に列挙して説明します。

  • セルバランス異常
    各セル間(最大セル電圧と最小セル電圧)の電位差が規定値以上になったときのエラーです。セルの経年劣化やセルの個体差に起因します。異常発生時の対処は、セルバランスを実行することです。ただし、ある特定のセルが劣化しているときにセルバランスを実行すると充放電を繰り返すことになるため、劣化を促進する懸念があります。そのため、何度もセルバランスを実行するような事態になったときは、バッテリパックのメンテナンスが必要です。
  • セル温度異常
    セル温度(最大セル温度と最小セル温度)が規定値以上になったときやモジュール間に温度差が発生したときのエラーです。特に懸念すべき状態は、セル温度が高温になったときです。原因は三点ほど考えられます。
    ①外気温が高温のときに、急速充電または急速放電を実施
     バッテリパックの充放電測定を実施して、事前にセルの温度上昇を把握しておきます。
    ②バッテリモジュールやセル付近に発熱部品を配置
     コンタクタなどの発熱部品はバッテリモジュールやセルに近づけないことです。
    ③バッテリの劣化による内部抵抗の上昇
     バッテリメーカーへ事前に内部抵抗を確認しておきます。
  • セル電圧異常(モジュール電圧異常)
    充電中にセル電圧やモジュール電圧が規定値以上になったときや使用中(放電中)にセル電圧やモジュール電圧が規定値以下になったときのエラーです。
  • センサ異常
    セル電圧を測定する電圧センサやセル温度を測定する温度センサ、バッテリの充放電電流を測定する電流センサが故障したときのエラーです。原因は、電池監視ICや温度センサ、電流センサの故障の他に、バッテリセル-セルモニターユニット(CMU)基板間の配線の断線、CMU基板の配線パターンの断線、コネクタの接触不良などが考えられます。

上記に列挙したエラーは、バッテリマネジメントシステムで監視すべきエラーの一部です。例えば、バッテリパックで接点回路として使用するコンタクタの接点不良や上位システムから供給される電源電圧(+12V)の電圧値異常など多くのエラーを監視する必要があります。バッテリが搭載されるバッテリパックのシステム構成によって、監視すべきエラーは決まってきます。

エラー発生時の対処

バッテリマネジメントシステムがエラーを検知したときは、エラーの内容によって以下の三種類の対処方法が考えられます。

  • 警告処置⇒異常処置
    セル温度が上昇した場合、上位システム(ユーザー)側へセル高温警告を報告します。方法としては、例えば製品に搭載されているメーターの警告ランプを点滅させます。最大セル温度に到達したときは、バッテリパックの接点(スイッチ)をオフにして充放電を停止します。そして、上位システム側にセル高温異常を報告します。
  • 異常処置
    電圧センサまたは温度センサ異常が発生した場合、その時点でバッテリパックの接点(スイッチ)をオフにして充放電を停止します。そして、上位システムへ電圧センサまたは温度センサ異常を報告します。
  • 起動停止
    製品の電源起動時にセルバランス異常を検知したときは、起動を停止し、上位システムへセルバランス異常を報告します。