ノイズ対策講座-1 ノーマルモードノイズとコモンモードノイズ
電子回路や電子機器の設計者にとって、ノイズ対策は永遠のテーマだと思います。ここではノイズ対策講座として、私の経験を踏まえながらノイズの種類や具体的な対策方法などについて解説します。
ノーマルモードノイズとコモンモードノイズの違い
伝播するノイズの種類として、ノーマルモードノイズとコモンモードノイズが存在します。
ノーマルモードノイズは、図1(a)のようにノイズ源が信号ラインに対して直列に入り、信号ラインと同じ方向にノイズが発生します。つまり、信号源から負荷への往路と負荷から信号源への複路では逆方向になるため、ディファレンシャルモードノイズと呼ばれることがあります。このノーマルモードノイズは比較的対策しやすく、信号源付近にインダクタやコンデンサなどの部品を実装すれば、ノイズを除去できます。
コモンモードノイズは、図1(b)のように浮遊容量や磁気による結合により、近接回路のノイズ電流が信号ラインのプラス側とマイナス側で同じ方向にノイズが発生します。コモンモードノイズは、復路であるグラウンドパターンとシャーシの接続点を経由してシャーシに流れ込むため、ノイズ対策が難しいです。
コモンモードノイズの対策例
コモンモードノイズは、コモンモードフィルタで対策することがあります。コモンモードフィルタの構造は、図2のようにフェライトコアに銅線を2ヶ所に巻き付けています。ディファレンシャルモード電流のときは、フェライトコア内部で磁束が打ち消し合うため、インピーダンスが発生しません。つまり、差動信号に対してはインピーダンスが低くなり、信号波形に影響を与えません。
コモンモード電流のときは、フェライトコア内部で磁束が足し合わされるため、大きなインダクタとして働きます。つまり、コモンモードノイズに対してはインピーダンスが高くなり、ノイズを抑制する力が働くことになります。
電源ラインでのコモンモードフィルタの活用例を図3に図示しています(※1)。基本的に電源ラインは、LCフィルタやフェライトビーズで対策します。ただし、このLCフィルタはノーマルモードノイズのときにのみ有効です。グラウンドは直結のため、コモンモードノイズは素通りしてしまいます。そこで、図3のように電源とグラウンドラインにコモンモードフィルタを実装します。コモンモードノイズが電源ラインに重畳しているときは、コモンモードフィルタで対策します。インダクタL1とL2はノーマルモードノイズ対策のため、そのまま残しておきます。
【参考文献】(※1)A-Dコンバータ活用 成功のかぎ 55ページ CQ 出版社(2009年4月)