ノイズ対策講座② ノイズの種類と対策方法

自然ノイズと人工ノイズ

ノイズは大きく自然ノイズと人工ノイズに分類されます。自然ノイズは自然界に発生するノイズで、代表的なノイズは落雷や冬に発生する静電気放電があります。人工ノイズは、電子機器が発生するノイズです。人工ノイズは、電圧や電流変動が基板のパターンやケーブルを伝播して発生する伝導ノイズと、電磁波として空間を伝播する放射ノイズに分類されます。

伝導ノイズと放射ノイズ

自然ノイズ 落雷サージ、静電気放電
人工ノイズ 伝導ノイズ フリッカノイズ(1/f ノイズ)、ショットノイズ、熱雑音、スパイクノイズ、リップルノイズ、クロストーク、リンギング
放射ノイズ
表1 ノイズの種類一覧

  • フリッカノイズ・ショットノイズ
    フリッカノイズとショットノイズは、トランジスタに起因するノイズです。フリッカノイズは別名1/fノイズと呼ばれており、低周波で大きくなるノイズです。ショットノイズは広い周波数領域に渡って一定の大きさを持つノイズで、トランジスタに流れる電流が不連続に流れることで引き起こされるノイズです。
  • 熱雑音
    熱雑音は、発熱してエネルギーを損失する抵抗などの素子において、電子の熱運動によって電流が不連続に流れることによって起因するノイズです。
  • スパイクノイズ・リップルノイズ
    スパイクノイズとリップルノイズは、主に電源回路で発生するノイズです。スパイクノイズは、電源回路をスイッチングするパルスの立ち上がり時や立下り時に電圧が変動するノイズです。リップルノイズは、スイッチング周波数に連動して電圧が変動するノイズです。
  • クロストーク・リンギング
    クロストークは、相互干渉によって近接する基板の配線パターンやケーブルの配線にノイズが引き起こされる症状です。リンギングは、基板の配線パターンやケーブルの特性インピーダンスが整合していないときに、反射によって信号の立ち上がり波形や立下り波形が大きく変動する症状です。

人工ノイズには、ノイズを発生する加害者とノイズの影響を受ける被害者が存在します。このノイズが発生することをエミッション(EMI)と呼び、ノイズの影響を受けることをイミュニティ(EMS)と呼びます。この二つを総称して電磁両立性(EMC)と呼びます。つまり、電子機器を開発するときのノイズ対策としては、ノイズを発生しない対策とノイズの影響を受けない対策が必要になってきます。

効果的なノイズ対策

表1に機器・装置の構成と使用部品に分類して、代表的なノイズの対策方法を列挙しました。

対策箇所 方法
①機器・装置の構成 部品配置 距離を置くなどノイズの影響を受けない位置に部品を配置する
シールド シールド板やシールドケースによりノイズを受けない、出さないようにする
グラウンド 広いグラウンドパターンを確保し、他の回路へのクロストーク防止、電位の均一化を図る
②使用部品 プリント配線板 パターンや層構成を工夫する
シールドケース 電磁波が集中する箇所にシールド板を配置する
金属ケースにより電磁波を反射もしくはグラウンドパターンに流す
磁性体ケースにより電磁波を吸収して熱にする
ケーブル シールド線や同軸ケーブルなどアンテナになりにくいケーブルを使用する
コネクタ シールドやインピーダンス整合などを行う
半導体 スペクトラム拡散などの信号処理が行われている半導体を使用する
内部回路や端子配置によりノイズを受けにくくした半導体を使用する
部品 シールドガスケット、電磁波吸収シートなどのノイズ対策部品を使用する
表2 代表的なノイズ対策一覧(※1)

①機器・装置の構成

機器と装置の構成では、部品配置、シールド、グラウンドにおいて対策を講じることができます。ノイズは、基本的に異なる信号エネルギーが影響を及ぼし合って発生する現象です。そのため、部品はノイズの影響を受けない位置に配置することが重要です。
ノイズ発生源の近くやノイズの影響を受ける回路の近くにシールド板やシールドケースを配置することで、ノイズ対策に大きな効果を発揮します。注意すべき点は、このシールド板やシールドケースはグラウンドパターンに接続し、この接続箇所を多くすることを推奨します。そのため、グラウンドは広いグラウンドパターンを確保する必要があります。

②使用部品

ノイズ対策の使用部品としては、プリント配線板、シールドケース、ケーブル、コネクタ、半導体などがあります。
プリント配線板のパターンでは、ノイズの影響を受けないような部品配置を行います。プリント配線板が多層基板の層構成は、内層をベタグラウンドにすることを推奨します。理由は、表層の信号線と内層のグラウンドパターンがマイクロストリップ構造となるため、寄生容量で信号線とグラウンドパターンが結合して、信号線に発生したノイズがグラウンドへバイパスしやすくなります。
ケーブルは、シールド線や同軸ケーブルを使用することにより、ノイズの抑制に大きな効果が期待できます。コネクタは信号の接続箇所であるため、コネクタ全体を金属板で覆う、フェライトコアを実装するなどの対策でノイズ抑制の効果が期待できます。
また、プリント基板とケース、ケースとケースが接合する箇所などに、電気的な接合を確実にするシールドガスケットや電磁波を吸収する電磁波吸収シートなどを使用します。

【参考文献】(※1)トランジスタ技術 これなら分かる!!PICマイコン 254ページ CQ 出版社(2009年4月)