ノイズ対策講座③ ノイズ対策部品と用途①

代表的なノイズ対策部品

用途 部品名
ディファレンシャルモード用 フェライトビーズ、3端子フィルタ、コンデンサ、インダクタ
コモンモード用 コモンモードフィルタ
AC電源用 電源用EMCフィルタ、ラインフィルタ
雷・静電気対策用 バリスタ、サプレッサダイオード
ケーブル用 フェライトコア、クランプフィルタ
シールド用 電波吸収シート

代表的なノイズの対策部品を表にまとめてみました。今回の講座では上表のノイズ対策部品の中で、コンデンサと3端子フィルタについて、説明します。

コンデンサを活用したノイズ対策方法


図1 デカップリングコンデンサの設置方法

コンデンサはノイズの周波数が高くなるにつれて、インピーダンスは低くなります。つまり、コンデンサで電源ノイズをグラウンドへバイパスすることができます。図1のコンデンサC1が実装されていない場合、コンデンサC2にノイズ電流が流れてしまうため、電流ループが大きくなってしまい、放射ノイズを発生する懸念があります。そのため、回路①の直近にコンデンサC1を実装することにより、ノイズ電流をグラウンドへバイパスして電流ループを小さくすることができます。また、コンデンサC1によって電源ラインのインピーダンスを低くすることができるため、ノイズ発生源の電圧を低くすることができます。
デカップリングコンデンサは、ノイズ源の近くに配置することが重要です。また、違う容量のコンデンサを並列に接続することで、広い周波数帯域において効果を得ることができます。ただし、このデカップリングコンデンサだけではノイズ対策の効果は不十分です。

デカップリングコンデンサの効果的な使用方法



図2 T型フィルタ(左側)とπ型フィルタ(右側)

図2のようにデカップリングコンデンサと一緒にインダクタやフェライトビーズを使用すると効果的です。電源ラインに直列にインダクタやフェライトビーズを挿入して、配線のインピーダンスを高くすることにより、ノイズ電流を減らして電流変化を小さくします。代表的な接続方法として、T型フィルタとπ型フィルタがあります。
注意点は、インダクタやフェライトビーズは、大電流が流れると磁気飽和する懸念があります。磁気飽和とは大電流が流れることによってインピーダンスが低下し、ノイズ効果が低減します。そのため、インダクタやフェライトビーズの定格電流に注意する必要があります。また、インダクタやコイルの周波数特性(定数)を発生するノイズの周波数に合わせる必要があります。

3端子フィルタとは


図3 3端子フィルタのT型フィルタ(左側)とπ型フィルタ(右側)

3端子フィルタは、コンデンサとインダクタを内部で組み合わせた高次のLCフィルタで、図2のような単体のコンデンサやインダクタで構成するフィルタより、大きな減衰特性を得ることができます。ちなみに、入力端子、出力端子、グラウンド端子の3つの端子があるため、3端子フィルタと呼ばれています。今回は3端子フィルタの中で、図3に図示したT型フィルタ、π型フィルタについて説明します。
T型フィルタは、典型的な3次のLCフィルタです。この3次というのは、周波数でインピーダンスが変動する部品が3個存在するという意味です。このT型フィルタは、フェライトビーズだけではノイズを除去できないときに使用します。インピーダンスが低く(数十Ω以下)波形品質が重視される信号ラインに挿入します。π型フィルタは3次のLCフィルタで、高周波バイパス用のコンデンサだけではノイズを除去できない信号ラインやインピーダンスが高い電源ライン(数百Ω程度)に使用します。