ノイズ対策講座-6 理想的な低ノイズのオペアンプとは?
アナログフロントエンド
図1にアナログフロントエンドのブロック図を図示しています。アナログフロントエンドは、センサやオーディオなどのアナログ信号とマイコンやFPGAなどのデジタル信号処理ICを結ぶアナログ回路のことです。
アナログフロントエンドは、mVやuV単位の微小な電圧を増幅するプリアンプ、プリアンプで発生するノイズを除去するフィルタ回路とバッファアンプ、アナログ信号をデジタル信号に変換するA-Dコンバータで構成されます。この中でノイズを多く発生する回路はどこでしょうか?…実はA-Dコンバータのデジタル出力とマイコンです。プリアンプで使用されている抵抗は熱雑音を発生し、オペアンプからもノイズを発生します。しかし、デジタル信号の矩形波、パルス波は多くの高調波成分を含んでいるため、デジタル回路のほうが多くのノイズを発生します。
理想的な低ノイズのオペアンプ
- オペアンプの雑音発生が少なく、外部雑音の影響を受けにくい
オペアンプのデータシートに記載されている電圧雑音や電流雑音の周波数特性で判断します。正式には入力換算雑音電圧密度、電流密度といいます。これは、オペアンプ内部で発生したノイズが、全て入力で発生したと仮定して規定されたノイズ量です。 - オペアンプの入力インピーダンスが十分高い
入力インピーダンスが低い場合、信号源の抵抗(出力インピーダンス)の影響を受けてしまうため、高いS/N比(信号雑音比)を確保できなくなります。 - オペアンプの周波数帯域が狭い
必要な帯域だけをカバーしているオペアンプを使用すると、ノイズの総量を少なくすることができます。
増幅回路で発生するノイズ
低ノイズのオペアンプ(低雑音オペアンプ)を使用して増幅回路を設計しても、以下に列挙するノイズが発生します。図2の非反転増幅回路で発生するノイズを説明します。
- 信号源抵抗RSの熱雑音
この熱雑音は、√(4×温度(K)×抵抗値RS(Ω)×帯域幅B(Hz))で表すことができます。センサなどの信号源を選定するときは、RSの抵抗値が小さい信号源を選定することにより、熱雑音を抑えることができます。 - 帰還抵抗RF1、RF2の熱雑音
- オペアンプ内部で発生するノイズ(入力換算雑音電圧Vn、入力換算雑音電流In)
- 入力換算雑音電流In×信号源抵抗RS
入力換算雑音電流Inが、信号源抵抗RSに流れることによって発生する雑音電圧です。 - 入力換算雑音電流In×帰還抵抗(RF1//RF2)
入力換算雑音電流Inが、帰還抵抗RF1、RF2に流れて入力に戻ってくる雑音電圧です。
【参考文献】(※1)計測のためのアナログ回路設計 19ページ CQ 出版社(1997年10月)