ノイズ対策講座⑦ 差動増幅回路の動作原理

コモンモードノイズを除去するために、差動増幅回路が使用されることがあります。アナログ回路講座① オペアンプの増幅率は無限大なのか? の文中に、オペアンプの出力電圧の算出式を以下のように記載してます。

VOUT = A ×(VIN+-VIN-

もし、コモンモードノイズEnがオペアンプの入力端子に重畳した場合、VOUT = A × ((VIN++En)-(VIN-+En)) となり、コモンモードノイズEnがオペアンプによってキャンセルされるのです。今回のノイズ対策講座では、差動増幅回路の動作原理について説明します。

差動増幅回路とは?

図1 差動増幅回路の構成

図1に差動増幅回路の回路図を図示しています。マイナス端子の抵抗の接続方法をどこかで見たことはないですか?…実は反転増幅回路と同じです。ただし、アナログ回路講座① オペアンプの増幅率は無限大なのか? で説明した反転増幅回路と違う点は、プラス端子がグラウンドではなく、VIN2の電圧をR6とR7の抵抗で分圧した電圧が入力されています。つまり、このマイナス端子の入力電圧はVIN+と同じになるため、出力電圧VOUTは、VIN+から抵抗R5の電圧VR5を引いた値になります。この電圧VR5は、抵抗R5と電流IR5を掛けた値に置き換えることができます。この電流IR5は、オペアンプの入力インピーダンスが高ければ、抵抗R4に流れる電流IR4に置き換えることができます。つまり、抵抗R4の電圧VR4÷抵抗R4になります。電圧VR4は入力電圧VIN1からVIN+を引いた値と同じなので、(VIN1ーVIN+)÷抵抗R4に置き換えることができます。ここで、抵抗R5/R4で括ると、図2のようになります。

図2 差動増幅回路のゲイン算出式

R4/R5×VIN+とVIN+を足すと、(R4+R5)/R5×VIN+になります。VIN+はR7/(R6+R7)×VIN2に置き換えることができるため、最終的には(R4+R5)/R4×R7/(R6+R7)×VIN2-R5/R4×VIN1になります。もし、R4=R6、R5=R7であれば、出力電圧VOUTはR5/R4×(VIN2-VIN1)となります。つまり、VIN1とVIN2の電位差をゲインR5/R4で増幅する増幅回路になります。
この差動増幅回路を使用することにより、差動信号を増幅することはできます。しかしながら、反転増幅回路は信号源に内蔵されている抵抗RSの影響を受けてしまいます。つまり、この抵抗RSの抵抗値が大きいと、この回路のゲインがR5/(R4+RS)になってしまう懸念があります。

ボルテージフォロワ回路+差動増幅回路=計装アンプ

この信号源の出力インピーダンスの影響を受けないように、差動増幅回路の入力にそれぞれボルテージフォロワ回路を追加した増幅回路が計装アンプ(インスツルメンテーションアンプ)です。図3に計装アンプの回路図を図示しています。

図3 計装アンプの構成

このボルテージフォロワ回路にはゲインを持たせていますが、このマイナス端子の抵抗の接続方法をどこかで見たことはないですか?…非反転増幅回路と同じです。

図4 計装アンプのゲイン算出式

出力電圧の電位差VOUT1-VOUT2は、抵抗R1~R3の電位差と同じであるため、R1+R2+R3に電流IRを掛けた値になります。抵抗R1に入力電圧VIN1とVIN2の電位差が印加されるため、この電流IRは、(VIN1+VIN2)/R1に置き換えることができます。そのため、(R1+R2+R3)/R1×(VIN2-VIN1)になり、抵抗R2とR3が同じであれば、(R1+2R2)/R1×(VIN2-VIN1)になります。この出力電圧の電位差VOUT1-VOUT2は、後段に接続される差動増幅回路の入力電圧になるため、差動増幅回路の出力電圧VOUTは、R5/R4×(R1+2R2)/R1×(VIN2-VIN1)となります。

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