ノイズ対策講座⑩ 電源ノイズの発生メカニズム

デジタル回路で発生するノイズ

図1 CMOS回路のスイッチング

デジタル回路のノイズ発生メカニズムを図1で説明します。図1はCMOS回路をスイッチ記号で表しています。実際は、上側のQ1のトランジスタはP-ch MOSFET、下側のQ2はN-ch MOSFETが使用されます。入力信号が”H”レベルであれば、下側のN-ch MOSFETがオンして”L”レベルを駆動します。逆に入力信号が”L”レベルであれば、上側のP-ch MOSFETがオンして”H”レベルを駆動します。このQ1とQ2がオンとオフを繰り返しています。
例えば、図1の左側の図のようにQ1がオンしてQ2がオフしているときに、右側の図のようにQ1がオフ、Q2がオンするとします。この場合、中央の図のように瞬間的にQ1とQ2が同時にオンする期間が存在します。このときに電源からグラウンドへ貫通電流が流れます。そのため、出力が”H”レベルから”L”レベル、または”L”レベルから”H”レベルへ変化するときに、電源ラインの電圧変動します。この電圧変動がノイズとなって伝播していきます。

電源ノイズの発生メカニズム

図2 マイコンの電源ラインに流れる電流

先程の図1では電源ラインの電圧変動がノイズとなって伝播すると説明しました。では、このノイズの発生メカニズムを図2で説明します。図2はマイコンの電源ラインに流れる電流を測定したときの図で、横軸が時間、縦軸が電流を示しています。
マイコン起動時に900mA近い突入電流を発生してから定常的に約150mAの電流を消費しています。ところが、このマイコンの間欠動作により、500mA近くの電流を消費する期間が発生しています。ちなみに、このマイコンは通信モジュール(Wi-Fi)を内蔵しており、定期的にWi-Fiで通信しているために間欠動作を発生しています。実は、このマイコンの間欠動作が電源ノイズを誘発しているのです。
基本的に電源は出力インピーダンスが非常に低いため、定格範囲内であれば出力電流に関係なくほぼ一定の電圧を出力します。しかしながら、微かではありますが電源ラインのインピーダンスやノイズ除去用のインダクタの直流抵抗成分により、マイコンの消費電流に応じて電圧降下を発生します。
例えば、電源ラインやインダクタの抵抗が0.1Ωとした場合、マイコンの消費電流が150mAであれば、15mVの電圧降下を発生します。マイコンの消費電流が150mAで安定しているのであれば、マイコンの電源には15mVの電圧降下を発生した電圧が入力し続けるため、電源電圧が変動することはありません。このときに、図2のような間欠動作が発生し、マイコンの消費電流が瞬間的に500mAになったときに、50mVの電圧降下を発生します。この50mVの電圧降下によって電源電圧が変動し、電源ラインにノイズが発生するのです。

電源ノイズの影響は

先程の例では、50mVの電圧降下によって電源電圧が変動し、電源ラインにノイズが発生すると説明しました。例えば、マイコンの定格電圧が5Vの場合、50mVの電圧降下があると、マイコンには4.95Vの電圧が入力されます。電圧降下が発生して電源ラインの電圧が4.95Vに変動したとしても、一般的にはマイコンの許容電圧範囲内であるため、誤動作することはありません。
しかしながら、この電源電圧の変動によって発生したノイズがアナログ回路の信号ラインに重畳すると大変なことになります。センサ基板の場合、センサで検知した数mVの電圧をプリアンプ回路で増幅します。このプリアンプ回路に50mVのノイズが重畳すると、全く機能しなくなります。そのため、マイコンなどデジタル回路で発生するノイズをアナログ回路に影響を与えない回路設計が重要になってきます。

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