独立開業シリーズ② 事業計画書の作成
独立開業シリーズの第二回目は「事業計画書の作成」です。事業計画書については「コンサルティング業務に携わる個人事業主には事業計画書は必要ない」とか「事業計画書通りに進むことはないから不要」と言われる方がみえます。しかしながら、何事も目標を立てることは重要と考えており、私が開業準備として初めて行ったことは事業計画書の作成でした。
事業計画書とは…
私が開業当初に作成した事業計画書は以下の通りです。私自身、事業計画書を作成した経験がないため、事業計画書を説く資格などないと自覚しておりますが、勝手ながら私の経験を述べさせていただきます。経営理念と事業内容については周知の事実であるため、リソース計画から順番に説明していきます。
- 経営理念 個人事業主として活動する際の基本的な考え方、目標
- 事業内容 社会に提供するサービス内容や時間給(単価)
- リソース計画 開業までの諸経費の見積りや開業後の月々の経費の見積り
- 経費計画 上記のリソース計画を参考にして一年間の経費を月毎に予測して算出
- 売上計画 上記の事業内容を参考にして一年間の売上を月毎に予測して算出
- 損益計画 上記の経費計画と売上計画を合算して収益を予測
- キャッシュフロー計画 上記の損益計画から実際の出入金の流れを算出
- マンパワー計画 上記の売上計画を実現するために必要な工数を予測
リソース計画
開業までの諸経費と開業後の月々の経費の項目をリストアップしました。
- 開業までの諸経費 パソコン、ヘッドセット、スーツ、靴、カバン、外注費(ホームページ、名刺)など
- 開業後の経費 ソフトウェア使用料(レンタルサーバー、会計ソフト、マイクロソフトなど)、新聞購読料、レンタルオフィス代など
開業までの諸経費で一番大きなウェイトを占めているのは外注費です。このホームページのヘッダーとロゴ、名刺デザイン、プロフィールシートはプロのデザイナーに依頼しました。これらのデザインはソフトウェアを活用すれば個人でもできると思いますが(私には絵心がないので無理…)、デザイナーは個人事業主の先輩ということもあり、開業時に分からないことを色々と相談することができたため、個人的には依頼して正解だったと思っています。
また、当設計事務所において開業後の経費で大きなウェイトを占めるのが、ソフトウェア使用料です。当初は月々の支払いを想定していましたが、年間契約のほうが安価なため、現在は一括払いに変更しています。
経費計画
上記のリソース計画に加えて、月々で変動する経費を加えた経費計画を作成します。
- 月々で変動する経費 接待交際費、会議費、旅費交通費、通信費(携帯電話)、事務用品代、セミナー受講料など
この経費計画を策定することで、月々に必要な経費を把握することができます。通信費などはいままでの使用料金で大体見積りができると思いますが、接待交際費や旅費交通費など開業前には算出できない経費があります。算出できない経費につきましては、大体の数字を入れて仮見積りとします。当設計事務所の場合、この経費計画から月々に平均して8~10万円程度の経費が必要であることが判りました(実際はコロナ禍のため接待交際費や国内交通費など殆ど使用実績なし…)。
売上計画
売上計画は事業内容からどのような企業から引き合いがあり、それを受注した場合の売上をシミュレーションして作成します。開業前のため、不透明な部分が多く、売上計画は希望的観測になってしまいますが、上記のように作成してみました。開業して二ヶ月が経過しましたが、いま振り返ってみると、それほど大きく乖離していないというのが実感です(開業してしばらくは売上がないのは当たり前ですが…)。
損益計画とキャッシュフロー計画
策定した経費計画と売上計画を合算して損益計画を算出します。この損益計画からは、事業が黒字になる時期が大体把握できます。当設計事務所の場合、今年の2~3月頃から少しずつ黒字になる見積りとなっています。
キャッシュフロー計画は、実際の出入金の流れを算出します。損益計画は発生主義、キャッシュフロー計画は現金主義…つまりは資金繰りを把握することができます。売上が発生したとしても実際に銀行口座へ振り込まれるのは良くて翌月、会社によっては翌々月ということがあります。その他には経費の支払いをクレジットカードで支払う場合は、翌月に銀行口座から引き落とされます。そのような事情をキャッシュフロー計画には反映させなければいけません。また、キャッシュフロー計画に月々の生活費を入れて、事業のみならず生活が維持できることを確認することが重要です。
当設計事務所のキャッシュフロー計画から判明したことは、赤字が累計で最大400万円近くになるということです…(汗)。売上が上がるにつれて赤字幅は減少していきますが(希望的観測です)、年内には黒字に転じないことも判りました。シミュレーション結果であるため正確ではありませんが、このキャッシュフロー計画を見ると気が引き締まる思いになります。
マンパワー計画
最後にマンパワー計画を策定します。売上計画に対して必要な工数を見積ります。ここで重要なことは、個人事業主のため、当たり前ですが一ヶ月の工数は一人月です。つまり、工数としては一ヶ月でも最大200時間程度しかありません。さらに、売上に直接貢献しない作業(ブログ制作、経理事務、営業活動など)を含めて200時間以内に収めなければいけません。マンパワー計画を策定して、一ヶ月の工数が200時間を超過している場合は、売上計画を見直さなければいけません。
事業計画書の作成にはかなりの時間を要しますが、個人的な所感としては全く無駄だとは思っていません。実際に数字を並べてみると、最初に立案した事業内容の妥当性が検証でき、細部においても工数不足、売上不足、資金不足などの問題が把握できます。個人事業主として開業をご検討されている方には、事業計画書の作成をお勧めします!