アナログ回路講座-1 オペアンプの増幅率は無限大なのか?

オペアンプの理想的な増幅率は∞(無限大)

図1 オペアンプ(演算増幅器)の回路図

オペアンプは、一対の差動入力端子と一つの出力端子を備えた演算増幅器です。図1にオペアンプの回路図を図示します。
図1において、出力電圧VOUTは、
VOUT = A ×(VIN+-VIN-)
で表すことができます。このAに該当するのが増幅率で、通常は10000倍以上あります。専門書でよく見掛けるルネサス製uPC358の場合、100000倍あります。
では、uPC358の増幅率を使用して実際に出力電圧を計算してみましょう。
図1において、VIN+が0.1V、VIN-が0Vの場合、増幅率は100000倍であるため、出力電圧は計算上10000Vになります。しかしながら、電源電圧は±10Vのため、10000Vの電圧は出力できません。では、オペアンプはどのように使用するのでしょうか?

増幅回路は負帰還を掛けて構成

オペアンプで増幅回路を設計する場合、図2、図3のように負帰還を掛けて構成します。つまり、出力電圧VOUTを入力端子である-端子へフィードバックします。このフィードバックの違いによって、反転増幅回路、非反転増幅回路に分別されます。入力電圧VINと出力電圧VOUT間の電圧を抵抗分圧して負帰還した増幅回路が反転増幅回路、出力電圧VOUTとグラウンド間の電圧を抵抗分圧して負帰還した増幅回路が非反転増幅回路になります。では、この増幅回路の増幅率はどのように決定されるのでしょうか?
オペアンプの増幅率を計算するためには、イマジナリショートを理解する必要があります。このイマジナリショートとは何でしょうか?
冒頭、オペアンプの出力電圧はVOUT = A ×(VIN+-VIN-)で表すことができると説明しました。オペアンプがuPC358の場合、入力端子間電圧(VIN+-VIN-)は、0.000001×VOUTで表すことができます。つまり、入力端子間電圧(VIN+-VIN-)は限りなく0Vに近くなることが分かります。言い換えれば、オペアンプは負帰還を掛けることによって、入力端子間電圧を限りなく0Vになるように出力電圧を制御するのです。このオペアンプの入力端子間電圧が0V、つまりは入力端子が同電位になる状態をイマジナリショートといいます。

反転増幅回路の増幅率は-RF/RIN

先に紹介した反転増幅回路、非反転増幅回路の増幅率の計算式を図2、図3に図示しています。
図2の反転増幅回路の場合、+端子がグラウンドに接続されているため、-端子はグラウンド、つまり0Vに接続されていると考えられます。そのため、出力電圧VOUTは、抵抗RFの電圧降下分であるVFと同じとなります。また、抵抗RFに流れる電流IFは、入力端子と-端子の間に接続されている抵抗RINに流れる電流IINと同じになります。そのため、電流IFはVIN/RINで表すことができ、出力電圧VOUT
-RF × VIN/RINとなります。つまり、反転増幅回路の増幅率は-RF/RINとなります。

図2 反転増幅回路

非反転増幅回路の増幅率は1+RF1/RF2

図3 非反転増幅回路

図3の非反転増幅回路の場合、+端子に入力電圧VINが入力されているため、-端子の電圧、つまりは抵抗RF1とRF2の中間電圧はVINとなります。そのため、抵抗RF1とRF2に流れる電流IFはVIN/RF2で表すことができ、出力電圧VOUTは(RF1+RF2)× VIN/RF2となります。つまり、非反転増幅回路の増幅率は1+RF1/RF2となります。