バッテリマネジメント講座-2 バッテリマネジメントとは?
バッテリマネジメントシステムとは
このブログのタイトルになっている、バッテリマネジメントについて解説します。バッテリマネジメントとは、充放電制御やセルバランス制御を行ったり、セル電圧やセル温度、充放電電流を監視したりして、安全にバッテリを充放電することです。
以下にバッテリマネジメントシステムの機能を列挙します。
- セル電圧、セル温度の監視
- 充放電電流の監視
- SOC(充電率)の算出
- SOH(健全度)の算出
- 充放電制御
- セルバランス制御
- バッテリ故障判定
バッテリマネジメントシステムは、上記の機能を実現することが目的ではありません。最大の目的は、上記の機能を実現することによりリチウムイオンバッテリが危険な状態であることを検知して対処することです。これが、バッテリマネジメントシステムの役割になります。
バッテリマネジメントシステムの構成
バッテリマネジメントシステムの理解を深めていただくために、図1に電動車のシステム構成を図示しています。
電動車のシステムは、バッテリの他にバッテリマネジメントシステム(BMS)、車両コントロールユニット(VCU)、インバータ、モーター、充電器などで構成されます。これらの部品は、CANというシリアル通信を使用してデータを送受信します。
バッテリマネジメントシステムのハードウェアは、マイコンや電池監視ICなどで構成されます。マイコンと電池監視IC間はI2CやSPIなどのシリアル通信でデータを送受信します。
図1に図示されているバッテリはバッテリセルが直列に接続されていますが、バッテリの中にはセルモニターユニット(CMU)とバッテリセルでバッテリモジュールを構成することがあります。その場合、セルモニターユニットに電池監視ICが搭載されるため、バッテリマネジメントシステムの主要部品はマイコンだけとなります。
バッテリマネジメントシステムは、遮断器などを制御して充放電電流を遮断してリチウムイオンバッテリを保護することができます。しかしながら、車両制御は車両コントロールユニットが行っているため、バッテリマネジメントシステムがバッテリの異常を検知したときは、車両コントロールユニットが車両システムを制御して車両を停止します。
セル電圧の測定方法
バッテリマネジメントシステムの機能の中で、セル電圧の測定方法を説明します。図2にセル電圧の測定回路を図示しています。セル電圧を測定して測定値をシステム側へ送信するために、マルチプレクス(MUX)、A/Dコンバータ(ADC)、基準電圧源(VREF)、I2CもしくはSPIなどのシリアルインターフェース(I/F)が必要になります。
各バッテリセルのプラス端子とマイナス端子をマルチプレクスに接続し、測定したいセルを選択します。選択されたセルのプラス電圧(VC n)とマイナス電圧(VC n-1)をA/Dコンバータへ入力し、セルの電圧値をデジタル信号に変換します。このセル電圧の測定は1~2mV程度の分解能が要求されるため、分解能が12~14ビットのA/Dコンバータが必要になります。変換されたデジタル信号は、I2CやSPIなどのシリアルインターフェースで送信されます。
殆どの場合、マルチプレクスやA/Dコンバータ、シリアルインターフェースなどの回路が1チップに内蔵されている電池監視ICを使用します。