アナログ回路講座⑦ 絶縁型DC/DCコンバータの動作原理

絶縁型DC/DCコンバータとは?

アナログ回路講座⑥において、スイッチングレギュレータについて説明しました。今回は、絶縁型DC/DCコンバータについて説明します。
絶縁型DC/DCコンバータとは、トランスなどで入力側(1次側)と出力側(2次側)を電気的に絶縁するコンバータです。例えば、入力側と出力側の基準電位(グラウンド)が異なる場合などに使用されます。アナログ回路講座⑥のスイッチングレギュレータは非絶縁型になります。 今回は、絶縁型DC/DCコンバータとして、フライバックコンバータとフルブリッジコンバータの動作原理を説明します。

フライバックコンバータの動作原理

図1 フライバックコンバータの回路図とタイミングチャート

図1にフライバックコンバータの回路図を図示しています。入力側である1次側と出力側である2次側はトランスで絶縁します。その他には整流ダイオードDと平滑コンデンサC、スイッチング用のMOSFET Qがあります。このMOSFET Qがオンすると、一次側は赤線IONのような電流のパスが発生します。このとき、1次側のコイルには入力電圧Eiが印加され、2次側のコイルは黒点が反対側なので、-Ns/Np×入力電圧Eiが誘導起電力として発生します。ちなみに、この2次側のコイルに発生する誘導起電力は、このトランスのNpとNsの巻線比で決定されます。この場合、マイナス電圧でダイオードはオンしないため、2次側には電流が流れません。そのため、負荷にはコンデンサから電流が供給されます。次にMOSFET Qがオフすると、1次側には電流が流れないため、今度は2次側のダイオードDがオンして、赤線IOFFのような電流のパスが発生し、出力に電圧Eoが発生します。1次側には電流は発生しませんが、2次側のコイルに電流が流れることによって、1次側に-Np/Ns×Eoの誘導起電力が発生します。 出力電圧Eoは、このNs/Np×入力電圧Eiの電圧に対してスイッチング周期のオン時間とオフ時間の比率で決定されます。
フライバックコンバータは、制御が簡単というメリットがあります。しかし、トランスの利用効率が悪いというデメリットがあります。使用する電力が250W未満であれば、フライバックコンバータで問題ありません。しかし、250Wを超える場合はフォワードコンバータ方式のDC/DCコンバータを検討する必要があります。

フルブリッジコンバータの動作原理

図2 フルブリッジコンバータの回路図とタイミングチャート

大電力を供給するときにはフルブリッジコンバータが使用されます。図2にフルブリッジコンバータの回路図を図示しています。特徴はMOSFETで構成されるスイッチを4個使用することと、トランスの2次側のコイルにタップを設けて2つのコイルが構成されていることです。MOSFETはQ1とQ4、Q2とQ3のペアで使用します。最初にMOSFET Q1とQ4をオンすると、赤色の線の方向に電流が流れて入力電圧Eiが1次側のコイルに印加されます。先程のフライバックコンバータとは異なり、1次側と2次側の黒点は同じ位置なので、2次側のコイルにはNs/Np×入力電圧Eiの誘導起電力が発生し、ダイオードD1がオンします。すると、2次側には赤色の線の方向に電流が流れます。次にMOSFET Q2とQ3がオンすると、今度は逆向きに青色の線の方向に電流が流れます。つまり、1次側のコイルには入力電圧-Eiが印加されます。同じように2次側のコイルには-Ns/Np×入力電圧Eiの誘導起電力が発生し、今度はダイオードD2がオンします。すると、2次側には青色の線の方向に電流が流れ、この動作が繰り返されます。
出力電圧Eoは、このNs/Np×入力電圧Eiの電圧に対してスイッチング周期とオン時間の比率で決定されますが、実は2倍されています。これは、図2のように、1次側にはEiから-Eiの電圧が入力されるため、出力電圧は2倍されています。ちなみに、MOSFET Q1とQ4, Q2とQ3のオンとオフの間に時間が空いていますが、この時間はデッドタイムです。このQ1とQ3、Q2とQ4の貫通電流を防ぐために、デッドタイムを設ける必要があります。