アナログ回路講座⑧ オペアンプの消費電力を計算する

オペアンプの許容電力

オペアンプなど電流を出力するICには、出力電流の最大値(標準値)が決まっています。ルネサス製オペアンプ uPC358の場合、データシートには、出力吐き出し電流(IO SOURCE)の標準値は40mA、出力吸い込み電流(IO SINK1)の標準値は20mAと定義されています。では、このデータシートに定義されている電流値まで電流を出力することはできるのでしょうか?
オペアンプの出力電流は、同じくデータシートで定義されている許容損失に関係しています。uPC358の許容損失のグラフを図1に示しています。オペアンプの消費電力は、このグラフの中に収める必要があります。
許容損失の特徴として、動作周囲温度が高くなると、許容損失は低くなる傾向があります。uPC358のデータシートには、許容損失は440mWと定義されています。実際は、図1の許容損失のグラフのように、動作周囲温度が20℃を超えると許容損失は低下し始めます。一番厳しいuPC1251G2、uPC358G2の場合、動作周囲温度が60℃のときの許容損失は300mWを下回るため、オペアンプの消費電力を300mW以下に収めなければいけません。では、オペアンプの消費電力はどのように計算するのでしょうか?

図1 uPC358の許容損失

オペアンプの消費電力の算出方法


図2 吐き出しの場合の消費電力の算出式

オペアンプの消費電力の計算方法について説明します。オペアンプの消費電力PTの算出式を図2と図3に示しています。出力電流が吐き出しの場合(図2)、オペアンプ自身の電源電流であるICCに電源電圧VCCを掛け合わせた値に、オペアンプから吐き出される電流IOと、電源電圧と出力電圧の電位差 VCC-VOUTを掛け合わせた値を足すと、消費電力を算出することができます。


図3 流れ込みの場合の消費電力の算出式

出力電流が吸い込みの場合(図3)、電源電流ICCに電源電圧VCCを掛け合わせた値に、オペアンプに流れ込む電流IOと出力電圧VOUTを掛け合わせた値を足すと、消費電力を算出することができます。このように算出した消費電力が、先程の許容電力のグラフに収まるように設計しなければいけません。

オペアンプの駆動能力を向上する方法

図4 オペアンプの駆動能力を向上する方法

uPC358の出力電流で説明した通り、汎用のオペアンプの出力電流は20mA程度です。つまり、オペアンプは大きな電流を出力することができません。オペアンプで大きな電流を出力する場合、図4のようにオペアンプの出力端子にトランジスタを出力バッファとして外付けします。オペアンプの出力からトランジスタのベースに電流を流すことにより、このトランジスタのコレクタに増幅された電流が流れるため、エミッタから大きな電流を出力することができます。このトランジスタの接地方法はコレクタ接地になるため、電圧利得は1で、電流利得は大きくすることができます。つまり、トランジスタのエミッタから出力される電圧はオペアンプの出力電圧を維持しながら、出力電流を増幅することができます。 オペアンプの接続先の負荷が大きい場合は、出力バッファとしてトランジスタを追加することをお勧めします。

【参考文献】μPC1251、μPC358データシート ルネサスエレクトロニクス株式会社(2017年)