バッテリマネジメント講座⑧ バッテリパックの接点回路

コンタクタの動作原理

図1 コンタクタの吸引・離脱電圧

バッテリパックに使用される接点回路として、リレーやコンタクタなどの電磁開閉器やパワーMOSFETが使用されることが多いです。接点回路の目的は、充放電時に適宜スイッチングする他に、バッテリパック内で異常が発生したときにバッテリの電流経路を遮断するためです。
コンタクタの動作原理を図1に示します。吸引電圧である定格電圧の0.7倍以上の電圧をコイルの両端に印加すると、コンタクタの接点がオンします。また、コイルの印加電圧を離脱電圧である定格電圧の0.2倍以下にすると接点がオフします。

コンタクタ選定時の注意点

  • 注意点1
    コンタクタには定格電圧と最大駆動電流のスペックがあるため、最大バッテリ電圧と最大充放電電流を満足するコンタクタを選定する必要があります。
  • 注意点2
    コンタクタはアークによる溶着が発生する懸念があるため、コンタクタはBAT+側とBAT-側の2ヶ所に設置します。
  • 注意点3
    コイルに電流を流すと逆起電力が発生するため、逆起電力をリセットする回路が必要です。例えば、コンタクタのコイルの両端にダイオードを接続し、コンタクタがオフしたときに逆起電力をダイオードに逃がします。
  • 注意点4
    コンタクタのコイルを通電し続けると発熱するため、バッテリモジュール(セル)から離れた場所に配置する配慮が必要です。
  • 注意点5
    コンタクタの吸引電圧を最小バッテリ電圧以下にする必要があります。例えば、定格電圧60Vのコンタクタの場合、吸引電圧は定格電圧の0.7倍の42Vになります。バッテリ電圧範囲が60V~40Vの場合、最小バッテリ電圧である40Vのときには、このコンタクタをオンすることができません。

無接点回路の動作原理


図2 MOSFETを活用した接点回路

MOSFETを活用した接点回路の構成を図2に示します。図2のように、P-chまたはN-ch MOSFETを2個直列に接続し、それをバッテリの充放電電流に応じて複数列並列で接続します。MOSFETを2個直列に接続する理由は、MOSFETには寄生ダイオードが存在するためです。MOSFETが1個の場合、充電または放電の一方向は、寄生ダイオードで絶えずオンになってしまいます。
図2のようにMOSFETのゲートを制御することにより、電流経路をオンまたはオフすることができます。

MOSFETの接点回路の注意点

  • 注意点1
    P-ch MOSFETはN-ch MOSFETと比較するとオン抵抗が大きいため、発熱に注意が必要です。最大充放電電流が50Aを超過するときは、N-ch MOSFETを使用します。ただし、N-ch MOSFETもオン抵抗は存在するため、電流を流すと発熱します。N-ch MOSFETを使用する場合でもMOSFETを複数列並列にして、1列当たりの電流量を20~30Aにします。
  • 注意点2
    接点回路にN-ch MOSFETを使用する場合は、ゲート電圧をバッテリ電圧よりVTH分だけ高くする必要があります。そのため、チャージポンプ回路で電圧を昇圧するブートストラップ回路が必要になります。
  • 注意点3
    MOSFETが故障したときに、接点回路を安全に動作させる必要があります。図2のようにMOSFETを複数列並列で接点回路を構成する場合、1個のMOSFETが故障すると、その他のMOSFETに流れる電流量が増加してしまいます。そのため、MOSFETが1個故障しても電流マージンを維持できるような並列数を確保する対策が必要です。また、MOSFETのジャンクション温度を超過しないように、MOSFETの近傍にサーミスタを実装して温度を監視する対策が必要です。
  • 注意点4
    MOSFETを実装する基板(プリント配線板)の配線幅に注意する必要があります。MOSFETは100A以上の電流を流すことはできますが、発熱を考慮すると定常的には20~30Aの電流が限界です。1列のMOSFETで20Aの電流容量を確保する場合、銅箔厚35umの場合、約20mmの配線幅が必要になります。