ノイズ対策講座⑧ 折り返し雑音とは?

ノイズ対策講座⑥ 理想的な低ノイズのオペアンプとは? の講座にアナログフロントエンドのブロック図が記載されています。そのブロック図の中にあるA-Dコンバータの前段にフィルタ回路が存在しています。この講座では、フィルタ回路が必要な理由について説明します。

サンプリング周波数

図1 各信号波形を10Hzでサンプリング

A-Dコンバータにおいて、1Hz、5Hz、8Hz、10Hzの各入力信号を10Hzのサンプリング周波数でサンプリングしたときの様子を図1に示しています。5Hzの入力信号までは、サンプリング波形と入力信号の周波数は同じです。ところが、8Hzの入力信号のサンプリング波形は、明らかに8Hzより低い周波数に見えます。10Hzの入力信号のサンプリング波形は、波形ではなく直流信号です。このように、サンプリング周波数は入力信号の最大周波数の2倍以上でなければ、サンプリングできません。これを、ナイキストのサンプリング定理といいます。
このサンプリング周波数の2分の1に相当する周波数をナイキスト周波数といいます。言い換えれば、サンプリングする信号の周波数は、このナイキスト周波数以下でなければいけません。図1の場合、サンプリング周波数が10Hzであれば、ナイキスト周波数である5Hz以下の周波数の入力信号であればサンプリングできます。

折り返し誤差

図2 1.2kHzと2.4kHzの信号を2.0kHzでサンプリング

図1と同じく、図2では1.2kHzの入力信号を2.0kHzの周波数でサンプリングすると、この信号は1.2kHzの信号ではなく800Hzの信号に見えてしまいます。1.2kHzの倍である2.4kHzの入力信号を2.0kHzの周波数でサンプリングすると、400Hzの信号に見えてしまいます。このように、入力信号の2倍以上の周波数でサンプリングしないと、誤った信号をサンプリングしてしまいます。

図3 折り返し雑音(※1)

信号帯域以外の周波数成分を含む信号を折り返し雑音、エイリアシングエラーといいます。図3において、信号帯域が1kHz、サンプリング周波数が2kHzのときに、1.2kHz、2.4kHzの信号がそれぞれ0.4kHz、0.8kHzの信号としてA-Dコンバータに取り込まれてしまいます。
ΔΣ型A-Dコンバータの場合、入力信号に対して高い周波数でサンプリング、つまりはオーバーサンプリングしているため、この折り返し雑音は発生しません。そのため、A-Dコンバータの前段に用意するフィルタ回路は、RCローパスフィルタ回路で充分です。しかしながら、逐次比較型A-Dコンバータはサンプリングレートを自由に可変できることから、入力信号とサンプリング周波数が比較的近いときに、折り返し雑音が信号帯域に発生しやすくなります。そのため、折り返し雑音を除去するローパスフィルタがA-Dコンバータの前段に必要になります。これをアンチエイリアシングフィルタといいます。

余談:折り返し雑音の由来


図3において、サンプリング周波数の2分の1であるナイキスト周波数(1kHz)のところを谷折りすると、800Hzと1.2kHzの帯域が合います。谷折りした状態でサンプリング周波数(2kHz)のところを山折りすると、400Hzと2.4kHzの帯域が合います。そのため、折り返し誤差と呼ばれています。

【参考文献】(※1)A-Dコンバータ活用 成功のかぎ 168ページ CQ 出版社(2010年8月)

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