バッテリマネジメント講座④ セルバランス制御

2種類のセルバランス制御方法

バッテリマネジメントシステムの機能の1つである、セルバランス制御について説明します。
セルバランスとは、各々のセルの電圧を均等にすることです。各セルの電圧を均等にする理由は、セル電圧にバラツキがあるとバッテリ容量が定格よりも低くなってしまうためです。セルバランスの制御方法には、下記の2種類の方法があります。

  • パッシブセルバランス

図1 パッシブセルバランスの説明図

図1のパッシブセルバランスの説明図において、セルA~セルDの4個のセルが図示されています。セルAとセルCのSOCは60%、セルBとセルDのSOCは80%とします。この場合、このセルの中で電圧が低いセルAとセルCに電圧を合わせます。そのため、セルBとセルDの20%分の電荷を放電して捨てることにより、セルA~セルDのSOCは全て60%になります。

  • アクティブセルバランス

図2 アクティブセルバランスの説明図

図2にアクティブセルバランスの説明図を図示しています。アクティブセルバランスは、パッシブセルバランスと異なり、電荷を捨てるのではなく、SOCが少ないセルへ回生充電します。図2では、セルBとセルDの電荷をセルAとセルCへ移し替えます。つまり、セルBとセルDから10%分の電荷を放電し、セルAとセルCへ回生充電します。そのため、セルA~セルDのSOCは全て70%になります。

セルバランスの実現方法


図3 パッシブセルバランスの実現回路

図3にパッシブセルバランスの実現回路を図示しています。パッシブセルバランスは、放電抵抗とMOSFETで構成された放電回路を使用します。例えば、1個のセルの電圧が3.0V、他のセルが3.1Vの場合、他のセルの電圧が3.0VになるまでMOSFETをオンして放電抵抗を介して放電します。

図4 アクティブセルバランスの実現回路

図4にアクティブセルバランスの実現回路を図示しています。アクティブセルバランスは、フライバックコンバータの原理を応用して実現しています。 例えば、セルAの電圧を3.1V、セルBの電圧を3.0Vとします。この場合、セルAの電荷を放電してセルBへ充電する必要があります。最初にMOSFETをオンしてセルAを放電するのですが、このトランスは直流電流を1次側から2次側へ誘導することはできません。この直流電流を交流にするためにMOSFETをチョッピング、つまりはオンとオフを繰り返します。1次側に交流電流を生成することで、鉄心に磁束を発生させて2次側のコイルに電流が誘導されるため、セルBを充電することができます。

各制御方法の利点は?

パッシブセルバランスの利点は、システム構成を簡単にできます。欠点は、バッテリの残容量が減少するため、エネルギー効率が低いことです。
アクティブセルバランスの利点は、全てのセルが完全に放電するまで使用できることです。つまり、バッテリ容量を最大限に使用できます。また、余剰エネルギーを他のセルに再分配するため、エネルギー効率が高いことです。欠点は、システムが複雑になるため、実装コストが高いことです。